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「俺の写真が貼られている・・・・・・」川田さんの手の平は一瞬のうちに汗で濡れ、緊張のあまり腹痛が襲っていた。
「気付いた奴が店の中にいたんだ・・・・・・しかも尾行までしている」友人はモニターを食い入るように見つめながら言った。
「どうしよう・・・・・・俺が元少年と勘違いされている」川田さんの声は震えていた。
カーテンの隙間からわずかに見えていた窓ガラスが、突然明るく光った。外では数人の男がたむろし、川田さんの部屋をスマホで撮影していた。近所に住んでいる掲示板の利用者たちが続々と集まり、ちょっとした祭りに発展しようとしていた。
掲示板の管理人にすぐさま連絡し、免許証の画像を送って誤解であることを伝えると、その日のうちにスレッドは消され、川田さんは胸を撫で下ろしていたが、ネット社会の現実はそんなに甘いものではなかった。
それから数年経った今も、悪ふざけの後遺症は残ったままだ。元少年の名前を検索すると、必ず自分の顔写真が出てきてしまうのだという。日本中に拡散された顔写真を消すことは、もはや不可能なことだった。
「あの元少年の名前で検索した時に出てくる写真は、僕なんですよ」川田さんはそう言って話を締めくくった。
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