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美嘉
美嘉は愛する恋人のユウヤと結婚し、九十九里の海辺の豪邸で幸せな生活を送るはずだった。 だが、夫は極度の潔癖症だった上に、美嘉に対する異様なほどの執着心を見せ始め、次第に激しい暴力を振るうようになる。美嘉が窓から夫以外の男を見たというだけで夫は彼女を殴り倒し、悲鳴を上げ床に倒れて泣く彼女をさらに罵りながら蹴るのだが、直後、悪びれる様子もなく「君が悪いんだよ」と優しく抱き起こし、プレゼントを買って来て宥めるのだった。 何らの自由も与えず自分を支配する恐ろしい夫からは離婚などの手段で逃れることができず、そんな生活に限界を感じた美嘉は、自らの死を偽装し、新しい人生を歩もうと考える。
美嘉はある晩、夫とその友人と共にヨットでクルーズに出掛けるが、急変した天候の中でヨットから転落、暗黒の海で行方不明に。 夫は泳げない美嘉の死を確信し嘆き悲しむが、実は美嘉は自宅前の浜辺に泳ぎ着き、用意してあった荷物を持って家を出ていた。 家を出る際、外した結婚指輪をトイレに流していたのだ。
美嘉はリオと名を変えてN街に家を買う。そこは夫と暮らしていた誰もいない、ただ水平線が広がるのみの海辺と違い、賑やかな人々で溢れる明るい町だった。
そして隣に住む、自動車工場に働く心温かい青年ロックと親しくなるのだが、彼は美嘉と愛し合おうとした時、異常に怯え泣き出した彼女に驚き、男に何をされたのかと訊く。
その日はそのまま何も出来ず別れたが、翌日美嘉はロックに全てを打ち明け、幸せな日々が始まる。
だがその頃、ユウヤはしばらく寄り付いていなかった自宅に戻り、便器の中に流れず残っていた結婚指輪を見つけて美嘉が実は生きている事を知った。
美嘉の裏切りに激怒したユウヤは私立探偵を雇う。そして美嘉が以前亡くなったと言っていた彼女の盲目の母親、豊子も実は生きており、千葉の老人ホームにいる事を突き止めて、そこで美嘉を待ち伏せする。
母親に会いたい美嘉はロックの助けを借りて男装し、スタッフのふりをして無事に母親の部屋に入る事が出来た。
ところがユウヤは自分は警察だと言って美嘉の母親を騙し、彼女がどこにいるかを聞き出した。
「フンッ!アンタなんかに誰がしゃべるか」
逆上したユウヤは豊子の首を素手で絞めて殺した。
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