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気が付けばヒールが階段の滑り止めに引っかかっていた。
あっと思った時にはもう、固いコンクリの床に受け身もとれず強かに打ち付けられていた。ちょっとした交通事故並みの衝撃だ。
あまりの痛さにすぐには起き上がれない。
窓口には職員がおらず、お客さんが待っている。
痛い。
でも行かなくては。
海斗や美咲が転んだら、わたしが助け起こして怪我の具合を確かめ、痛いの痛いの飛んでいけとおまじないの一つもかけてあげるところだ。
子どもはよく転ぶが体重が軽いし、体も柔らかい。なので大した怪我でないことがほとんどだ。
しかし大の大人のわたしは体重もそれなり。運動不足の体は筋肉より贅肉が大部分を占めている。
骨は丈夫な方だと思う。
果たしてどの程度の怪我だろうか。
その時わたしの頭の中では、海斗の見ているアニメの骸骨のキャラクターが浮かんでいた。
衝撃を受けると骨がバラバラに外れてしまうが、またすぐに骨は元の位置に戻って元気になるのだ。
いけそうな気がする。
なんだかあちこち痛いが、折れてはいない。
わたしはもうすぐ四十になろうという大人で、今は勤務中。
立ち上がれ、わたし。
その時だった。
「大丈夫ですか?」
若い男性の声。
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