竜嗣と佑馬 2

2/11
136人が本棚に入れています
本棚に追加
/261ページ
 2007年7月  一学期の終業式。  明日から始まる青春の夏に逸る生徒達が坂を下る中、竜嗣は一人丘の上に向かっていた。  竜嗣の仕事は放課後から始まる。  そのためホームルームが終わると大概そそくさと学校を後にすることになる。  そんな中、時間に余裕がある日は学校の上の丘に登り、街の景色を眺めることが竜嗣と佑馬の日常になっていた。  朽ちた学校の椅子に座って何をするでもなく、二人でただ景色を眺め風を浴びる。  竜嗣にとってはあまりにも贅沢な時間。    初めて言葉を交わした翌日、竜嗣は清水の舞台から飛び降りる思いで佑馬の名前を呼び捨てにした。  それに対して佑馬は別段特別な反応をすることもなく笑顔で応えてくれた。  あの瞬間の安堵と、心地よい苦しさと、胸が満たされる熱い感覚。  湧き上がる涙とにやける口元を必死で堪えた自分を竜嗣は思わず褒めた。    竜嗣はあまり他者と関わるのが上手くない。  幼い頃から父に帝王学を仕込まれるも、周囲の大人たちからチヤホヤされ竜嗣は帝王っぽい仮面を身につけてしまったのだ。
/261ページ

最初のコメントを投稿しよう!