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 そのうち、部活で写真を撮るだけでは足らなくなった。  もっと、違うあなたが見たい。  沙耶は隼人を尾けるようになった。  隼人の部活が終わるのを待って、尾けた。  沙耶の目の前には、高校の頃のブレザーを着た、隼人の後ろ姿があった。  あ、夢だ。  沙耶は反射的に思った。夢を見ている。  隼人は色とりどりの花束を抱えている。白いモヤがかかったような景色に、隼人の抱えているそれだけが変に鮮やかだった。 (ああ。このとき)  これは、卒業式の日だ。周囲の止める声に、用事があると申し訳なさそうに笑いながら、隼人は帰宅した。その後を、沙耶は尾けていた。  隼人に向けられる、色とりどりの花束と、声と。  見て、目の当たりにして、沙耶は分かったのだ。  隼人と自分は違う。全然、違い、ます。私どこかで、思ってました。あの時、目が合った時、笑ってくれた、隼人くんを見て、わたし。 あなたが、私と、同じなんじゃないかって」  夢の中で声に出した。沙耶の胸は張り裂けそうだった。そうだった。あの日、そう思ったんだ。隼人は自分とは違うと。急に、気付いて、もう止めようって。そして、その日の夜に、真っ白に。        
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