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「どうして」
少し、唇が震えた。
「どうして、お母さんが亡くなったことを、知ってるんですか?」
分かっている。沙耶は願う。火事のことが新聞に出ていたのだ。そうに決まっている。
「どうしてって」
隼人はまた笑う。
「お前を助けたの、俺じゃないか。もしかして忘れちゃってんのか?」
沙耶は、息を呑んだ。夢の中だけの話ではなかったのだ。
あの日、隼人は沙耶を見つけると、意識が朦朧としている沙耶を抱きかかえて、外へ連れ出してくれた。そのあとで沙耶は、消防隊員に発見されたのだ。
「ど、どうして、あの場に、いたんですか?」
「どうして、って、そんなこと聞くかなぁ? 声出さないでくれよ」
隼人は沙耶に近付くと、耳元で優しく囁いた。
俺が、火をつけたからだよ。
叫びそうになるのを、沙耶は必死に我慢した。
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