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思わず声に出る。強烈な視線が沙耶を射抜いた。思わず身震いする。眠る前の、あの感覚に似ていた。
誰かが、見ている。
見渡しても白いばかりで、何も見えない。
「だ、だれ。誰か。いるんですか?」
沙耶は初めて怯えた。思えば、夢にしては意識がはっきりし過ぎている。
でもこれは夢だ。
それ以外はあり得ない。
沙耶は確かに眠った。眠ったのだ。
「 へ 、 こ 」
どこからか言葉になっていない音がする。男のような、女のような、若いようで年寄りのような。
知っている。
私は、この声を、知っている。
沙耶は目を閉じた。夢の中で目を閉じる、というのも変だが、目を閉じると暗闇が現れた。そのことに妙に安心して、沙耶は目の前の暗闇に意識を委ねた。
目を閉じる。目を閉じ眠っている。目を開ければ、自分の部屋。今いるのは、自分の部屋だ。
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