3

2/3
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
 小さく声が漏れる。  笑った。  この人、笑った。  沙耶が今まで見たことのない、暖かく、優しくて、まるで。 「隼人ってばー!! きーてんのー!?」  女の甲高い媚びた声がする。  隼人は沙耶から静かに目をそらし、声の主の女に視線を向けた。  沙耶も慌てて、本に目線を落とした。  何してるんですか。私は。  頬が熱くなる。  見つめ合っていた? 藤崎隼人と?  クラスの人気者と、誰にも気付かれずに。  そんなの。  いま、読んでいる小説の、許されない秘められた恋、みたいです。  沙耶は本で顔を隠し、頬を緩め、ニヤニヤした。 「……キモっ」  どこからか、声が聞こえた。沙耶はすぐに笑顔を消した。  誰とも仲良くしようとせず、本ばかり読んでいる沙耶は、すでに浮いた存在だった。  そんな沙耶が、初めて興味を持ったのが、あろうことかクラスの人気者の藤崎隼人だった。     
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!