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小さく声が漏れる。
笑った。
この人、笑った。
沙耶が今まで見たことのない、暖かく、優しくて、まるで。
「隼人ってばー!! きーてんのー!?」
女の甲高い媚びた声がする。
隼人は沙耶から静かに目をそらし、声の主の女に視線を向けた。
沙耶も慌てて、本に目線を落とした。
何してるんですか。私は。
頬が熱くなる。
見つめ合っていた? 藤崎隼人と?
クラスの人気者と、誰にも気付かれずに。
そんなの。
いま、読んでいる小説の、許されない秘められた恋、みたいです。
沙耶は本で顔を隠し、頬を緩め、ニヤニヤした。
「……キモっ」
どこからか、声が聞こえた。沙耶はすぐに笑顔を消した。
誰とも仲良くしようとせず、本ばかり読んでいる沙耶は、すでに浮いた存在だった。
そんな沙耶が、初めて興味を持ったのが、あろうことかクラスの人気者の藤崎隼人だった。
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