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夢を見ている。夢を見ていた。
忘れていたけれど、おそらく毎夜のように。
私は真っ白な中にいる。眩しくて、目が開けられないくらいに。
違う。これは、空間が白いのではない。目がくらむほどの、炎と煙で、白く見えていたんだ。
沙耶はやっと気が付いた。これは、あの時の夢なのだ。必死に叫んで。助けを呼んで。煙を吸ってしまって、意識も朦朧としてきた、そのとき。
沙耶はあの人の声を聞いたのだ。
くしゅん。
くしゃみが出る。沙耶は眠ってしまったようだ。11月にしては暖かいとはいえ、外で眠ってしまうなんて。
顔を上げると、向かいの席に隼人が座っていた。
沙耶は、血液が逆流するような感覚に襲われた。
ここはまだ夢なのかと、沙耶は瞳を大きく見開き、目の前の隼人をまじまじと見つめる。
隼人はそんな沙耶の様子を意に介さず、優しく微笑んだ。
「久しぶりだな。白井」
その声を聞いて、沙耶は思い出した。
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