3人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
3
沙耶が藤崎隼人に気付いたのは、同じクラスになって半年も経った頃。
「藤崎! 今日学校終わったら、カラオケ行こうぜ!」
「隼人は放課後私らと出掛けるのよ。ね、隼人。部活早く終わるんでしょ?」
授業の合間の休憩時間。
そんな短い間にも、上辺だけのコミュニケーションに彼らは必死だった。
入学当初、探るように周囲を見ていた奴らが、探り合ったままくっついて、寂しさを埋めあっている。
沙耶にはそう見えた。
クラスはいくつかのグループに分かれている。
派手なグループ、勉強熱心な真面目なグループ、大人しいグループ。
そして、男女混合、クラスの中心的な、いわゆるイケてるグループ。
その中の中心人物が、藤崎隼人。
さわがしい、人たち。
沙耶は本を読みながら、眉をひそめた。今は休憩時間なのだから、黙っている必要はない。それでも、小さく、弱く、抗議の視線を送る。
ちらり、一瞥をくれるだけ、だった。けれど。
藤崎隼人と目があった。
その時、沙耶はわかった。
彼は、全然笑っていない。
笑い声の中にいるのに、全然、笑ってない。
その瞳に射抜かれて、沙耶は驚いて瞳を見開いた。
瞬間、隼人は笑った。
「え?」
最初のコメントを投稿しよう!