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 沙耶が藤崎隼人に気付いたのは、同じクラスになって半年も経った頃。 「藤崎! 今日学校終わったら、カラオケ行こうぜ!」 「隼人は放課後私らと出掛けるのよ。ね、隼人。部活早く終わるんでしょ?」  授業の合間の休憩時間。  そんな短い間にも、上辺だけのコミュニケーションに彼らは必死だった。  入学当初、探るように周囲を見ていた奴らが、探り合ったままくっついて、寂しさを埋めあっている。  沙耶にはそう見えた。  クラスはいくつかのグループに分かれている。  派手なグループ、勉強熱心な真面目なグループ、大人しいグループ。  そして、男女混合、クラスの中心的な、いわゆるイケてるグループ。  その中の中心人物が、藤崎隼人。  さわがしい、人たち。  沙耶は本を読みながら、眉をひそめた。今は休憩時間なのだから、黙っている必要はない。それでも、小さく、弱く、抗議の視線を送る。  ちらり、一瞥をくれるだけ、だった。けれど。  藤崎隼人と目があった。  その時、沙耶はわかった。  彼は、全然笑っていない。  笑い声の中にいるのに、全然、笑ってない。  その瞳に射抜かれて、沙耶は驚いて瞳を見開いた。  瞬間、隼人は笑った。 「え?」     
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