4

1/1
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

4

 沙耶は隼人を待つため、近くのカフェに入ることにした。沙耶は店員にお願いして、テラス席へ案内してもらった。肌寒くなってきたが、天気が良いからか、テラス席はちらほらと埋まっていた。空いている中の一つに、運良く座ることが出来た。大学の門が、よく見える。  店内は大学の生徒が大半らしかった。そちらこちらから、教授が、小論が、サークル飲みが、と聞こえてくる。  隼人くん、まだでしょうか。沙耶は伸びをしながら思う。今日は隼人は大学に来ているはず。何故なら、彼のTwitterにそうつぶやいてあったから。  隼人がTwitterを始めた事は、高校の卒業式で知った。グループの人たちに、Twitterのことを話しているのを聞いた。  沙耶は、検索エンジンを駆使した。具体的には「Twitter 特定」等である。  隼人はTwitterによく書き込みをした。 『今日は大学の入学式!』 『今からバイト! 駅前の居酒屋で働いてるけど、シフトは11時まで。頑張ります』  そして。 『今日は授業ないけど、大学の図書館に行こう。昼前には切り上げて、ラーメンたつやに行こう。あそこの麺は最高』  これが、今日のツイート。  予定表でも兼ねているのかのように、今後の行動がよく分かる。昼前には大学を出てくるはず。今は11時過ぎ。今か今かと、沙耶は落ち着かなかった。  もう、11月だ。  卒業式以来、半年以上彼を肉眼で見ていない。緊張もする。  隼人を待つ間、沙耶は追跡行為の衝動が収まっていた件について、分析を試みた。  その1、SNSを観ることで、実際に見ていなくとも、ある程度沙耶の追跡欲を満足させた。  その2、学校で毎日会うこともなくなった、ということも大きいかもしれない。隼人は沙耶の日常ではなくなった。  その3、沙耶も新しい生活が始まって忙しかった。急遽家を出て一人暮らしすることになった。  沙耶は頼んだ紅茶に口をつける。なかなかに美味しい。  その4、ストレスの元がなくなったから。高校生活、過干渉な母親ーー。 「まったく、酷い娘です」  沙耶は独り言をつぶやくと、空を見上げた。寒くなって来たこの季節、どこまでも空気は澄んでいて、どこまでも果てがないくらい空は高く見えた。  段々と、沙耶は眠くなって来てしまった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!