5

1/2
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

5

 沙耶は客観的に見て、容姿は悪い方ではなかった。 目立たない顔立ちではあるが、バランスの取れたそれなりの作りだった。  ここに愛嬌が加われば、多少モテたり、友達も出来たことだろう。  実際、沙耶は、中学まではそれなりの人生だった。  友達も少ないけど、いるにはいた。  勉強は好きではないけど出来たし、友達と同じ県内一の進学校に入る予定だった。  でも落ちた。  友達は受かった。  それから始まった高校生活は、転がり落ちるようにうまくいかなかった。  でも、その高校生活の中で、隼人に出会った。  高校生の頃。バスケ部の練習の時間。  沙耶は、見学の女子の中には入れなかった。  授業がおわったら、真っ先に体育館へ向かって、放送室に隠れた。放送室の窓から、体育館の中を見渡すことが出来たからだ。同じ輩が入ってこないように、いつも中から鍵を閉めた。  沙耶だけの、空間。  沙耶はうっとりとパイプ椅子に腰掛け、練習をしている隼人に見入った。放送室は、ちょうどバスケットボールのコートの目の前の位置だったので、よく見えた。  いつも開いている訳ではないから、入れないときは諦めて帰る時もあった。     
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!