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沙耶は客観的に見て、容姿は悪い方ではなかった。
目立たない顔立ちではあるが、バランスの取れたそれなりの作りだった。
ここに愛嬌が加われば、多少モテたり、友達も出来たことだろう。
実際、沙耶は、中学まではそれなりの人生だった。
友達も少ないけど、いるにはいた。
勉強は好きではないけど出来たし、友達と同じ県内一の進学校に入る予定だった。
でも落ちた。
友達は受かった。
それから始まった高校生活は、転がり落ちるようにうまくいかなかった。
でも、その高校生活の中で、隼人に出会った。
高校生の頃。バスケ部の練習の時間。
沙耶は、見学の女子の中には入れなかった。
授業がおわったら、真っ先に体育館へ向かって、放送室に隠れた。放送室の窓から、体育館の中を見渡すことが出来たからだ。同じ輩が入ってこないように、いつも中から鍵を閉めた。
沙耶だけの、空間。
沙耶はうっとりとパイプ椅子に腰掛け、練習をしている隼人に見入った。放送室は、ちょうどバスケットボールのコートの目の前の位置だったので、よく見えた。
いつも開いている訳ではないから、入れないときは諦めて帰る時もあった。
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