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「なに!?」
大嶽丸の驚きの声もつかの間、反応しきる時間すらおかず、真上から一条の炎が大嶽丸の体に落ちる。
轟音と爆発。それはまるでアーク溶接のように眩く、炎の高温を如実に表していた。一瞬の攻防に桃舞は思わず目を見開いていた。爆炎の傍らにはヨミともう一人、甲冑姿の女性のような人影が見える。あれも恐らくは久遠の式神なのだろう。しかし、確か彼は管狐も使役していたはずだ。
三体。二体を超えて調伏に成功した式神使いなど聞いた事が無かった。この大儺儀に召集された所以、白臣や桃舞、有隆と同様に久遠もやはりただものではないのだと桃舞は改めて認識する。
濛々と立ち込める爆炎を見据える彼女たちの表情はしかし芳しくない。この程度で倒せるほど甘い相手ではないと分かっているからだ。
「宇治の橋姫、か。名のある妖を従えておるのう。久遠とやら」
声がした直後、爆炎の奥から横殴りに巨大な質量が放たれた。それが巨大な籠手を装備した腕だと認識できた頃には、砲弾のように橋姫の体がはるか後方に吹き飛ばされる。
「がっ!?」
「ハシヒメ!」
久遠が首を振って橋姫に向かって声をかけると、背後に悪寒が走った。十メートル以上の距離はあったはずだが、既に大嶽丸が久遠の背後に迫っていたのだ。その腕は再び元のサイズに戻っている。
「しまっ……!?」
「久遠!」
ヨミの声が戦場に響く。少年の姿をした鬼はそのまま空中で横回転、勢いのまま凄まじい威力で久遠の横っ腹に蹴りを、そして高速で駆けつけたヨミに裏拳を叩き込んだ。一連の攻防はまさしく一瞬。まるで鳳仙花の実が破裂するようにそれぞれバラバラの方向に吹き飛ばされた。
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