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たからもの
子供の僕にはラムネの瓶な中のビー玉がとっても魅力的に見えていた。
光に透かすときらりと光ってどんな物より心が擽られた。
取り出そうと、飲み口をぎゅっと、顔が真っ赤になるほど、力を込めて回すけど、瓶の中でカラカラとビー玉が音を立てるだけ。
力の弱い僕では取り出せない。
「お父さん!ビー玉取って!」
そう言って父に瓶を渡すと、なんでもない様に、キュッと飲み口を捻って簡単にビー玉を取り出してくれた。
ちょっとムッとした。
だけど、そんなこと気にとしない父さんはベタベタするからなと、さっと、軽く洗い流してビー玉を渡してくれた。
ほんとうに、ちょっとだけ!ちょっとだけ!カッコイイと……思った。
きらきら光るビー玉。
僕の宝物になった。
ラムネを飲む度にビー玉を集めた。
母さんからも貰った大きな空き缶にひとつ、ひとつ貯めた。
宝はどんどんどんどん増えていく。
あのころの僕は、ビー玉1つ1つ1つがとっても素敵なものに見えていたんだ。
久しぶりに飲んだ瓶のラムネ。
一緒にいた彼女は中身を溢れさせてキャーキャー言っている。ほら、とハンカチを渡すと素直にありがとうと、受け取って手にかかったラムネを拭いていく。
カランと、瓶の中のビー玉が音を立てて、ふと、昔の記憶を思いだした。
記憶は栓を抜いたラムネのように溢れてくる。
小さい頃、集めていたものがあったんだ。
「何を?」
ラムネ瓶の中のビー玉
「なんでそんなの集めてなの?」
話を聞いていた彼女はケラケラと笑った。
なんでだろうなぁ、ビー玉がさ、すっごいお宝に見えてたんだよ。
「まだあるの?」
彼女は太陽に瓶を透かし、ビー玉を見た。
実家の押し入れの奥とか物置とか、探すとあるかもなぁ。
ビー玉をいつまで集めていたのかも、覚えていない。ビー玉集めにハマったのはほんの少しの期間だけで、、ゲームばかりするようになっていたかもしれない。
「今度実家に行った時、探してみようか」
彼女は悪戯っぽく笑う。
でも、ないかもしれないぞ?
「宝探しだよ?」
カラカラと瓶を揺らし、彼女は無邪気に言う。
……それもいいかもしれないな
子供の僕が集めたビー玉ばかりの宝箱。
今度は俺が宝箱を探す冒険をしてみても。
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