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物腰の柔らかそうな清涼が話し出す。
「白魔女・・・」
「白魔女は大昔に滅んだと思われていたが、実は生きていたんだ。白魔女自体は害は無いものの、その特殊な能力はどの時代でも恐れられ、求められていた」
清涼から定室にバトンタッチする。
「その力を利用しようとする者と、根絶やしにしようとする者。どちらに転んでも、セラムには絶望しか待っていないんだ」
「そうか・・・。それであいつらも必死にお前のことを追ってたのか」
「それに、照魔鏡のこともある」
そう言ったのは、三人の中で一番物静かな黒田だ。
「照魔鏡?」
「照魔鏡は、本性を照らし出す鏡とか言われてる。実際存在していると確認できたのも、随分前のことだ」
「その照魔鏡も狙われてるってことか。サラム、お前それ知らないのか?」
「知らない」
はっきりと答えたサラムだが、その声は別の場所に届いていた。
音声解析をしている健は、そのサラムの言葉をパソコンで調べると、こう言った。
「嘘ですね」
近くには、缶コーヒーを飲んでいる間ノ宮がいた。
特にそれに対して言葉を返すこともなく、間ノ宮はそこから立ち去ると、ゴミ箱に缶コーヒーを棄てた。
「へー、なんかよくわかんねぇけど、サラムはすげぇってことはわかったよ。で?サラムがその照魔鏡ってやつを知ってると思ってるから追われてるってことか?」
シリアスな空気をブチ壊すような大我の声が透き通る。
定室と黒田が釣った魚を焼いて食べていると、サラムはあまり魚を食べたことがないのか、怪訝そうな表情をしている。
周りが食べているから、きっと毒は入っていないだろうが、それでも初めて口にするそれは、なんとも言えなく香ばしい。
気付けばぺろりと平らげていた。
「照魔鏡の在処を知るためでもあるし、白魔女の生き残りを抹殺するためでもあるだろうな」
「酷ェな」
平然と言う黒田は、すでに身体を倒して寝る体勢に入っていた。
寝そべっている黒田の頭をペシッと叩いた清涼だったが、黒田はちらっと清涼の顔を横目で見ただけで、身体を起こすことはなかった。
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