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定室が、隠れるにはうってつけだろうと言ってみんなを連れて来たのは、古びた教会だった。
以前、仕事の関係でここの近くを通りかかったとき見つけたらしく、こういう場所には物騒な男たちは近寄らないだろうということだった。
ステンドグラスは綺麗に輝いているし、教会の奥にあるパイプオルガンもまだ美しい音色を奏でそうだ。
「ここの教会を管理している、神父デイジーとシスターベルガモットだ」
「ようこそ」
定室に紹介されたのは、デイジーという茶髪の神父と、ベルガモットという前髪が綺麗に揃えられている黒髪のシスターだ。
二人はサラムたちを受け入れ、食事と寝床を与えた。
食事と言ってもとても質素なものだが、ここのところ野宿ばっかりだったサラムたちにとって、暖かい寝床は有り難いものだった。
教会には祭壇のようなものもあり、その後ろには羊の頭に黒い角、背中には黒い翼と思われるものが描かれた絵画が飾られている。
正直、教会に飾る様な絵画では無いと思ったものの、人それぞれというか教会それぞれなのだろうと思い、特に何も言わなかった。
マリア様やイエス様のものが何一つないというのが気になったものの、それも教会それぞれなのだろうか。
ゆっくり休む時間が無かったため、すぐに寝てしまうかと思ったが、なかなか寝られなかった。
大我は寝床とは別の部屋を徘徊していると、黒田がやってきた。
「おう、お前も寝られないのか?」
「・・・お前に聞きたい事があってな」
「?聞きたい事?」
ただでさえ強面の黒田に睨まれた?いや、ただ見ているだけかもしれないが、それでも睨まれていると思ってしまうほどの目つきで、大我は口角をいつもよりあげて笑った。
黒田は大我の前を通り過ぎると、そこに飾られている、先程のものとは違う山羊の絵を眺めながら口を開く。
「お前、昨日誰かと話してたよな?」
「え?何のことだ?」
「聞いたんだよ。お前、誰かと連絡取ってんのか?もしかしてお前」
「何言ってんだよ!俺は誰とも話なんかしてないし、そもそも、どうやって連絡なんて取るんだよ?黒田の勘違い勘違い!」
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