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心臓が渇いたようにドクドク波打ち、流れている川から必死に手で水を掬い、口へと運んで行く。
「大我」
「ん?なんだ?」
大我も水を飲もうとしたとき、黒田に声をかけられる。
いつも神妙な顔をしている黒田だが、いつも以上に神妙な顔をしている。
大我は、黒田が何の話をするかを察知しながらも、へらへらと笑いながら何の用かと聞く。
「お前、諜報部員だな」
黒田の言葉に、大我の顔つきが一瞬変わる。
本当にちょっとの時間だったため、黒田が気付いたかどうかはわからないが、黒田の目つきも変わったため、気付いたのかもしれない。
すぐに笑いだした大我は、黒田の肩をばしばし叩きながらこう言う。
「お前、本当に面白い奴なんだな!!俺が諜報部員?そんな風に見えるのか?俺はただ偶然サラムに会っただけで」
「おかしいと思って調べたんだ。お前は警察内で働いているわけじゃなく、内密に仕事を請け負っている。簡単に言えば、期間限定で雇われた諜報部員だ」
「止めてくれよ。俺そういう真面目な男に見える?見えないだろ?」
「警察内のデータにも入っていないから、万が一正体が怪しまれても、警察の人間じゃないから内通者から除外されるってわけだ。生憎だが、俺の目はごまかせない」
「参ったなぁ。本当に俺がその諜報部員ってやつだと思ってるんだ?」
「ああ」
真っ直ぐな目で見てくる黒田に、大我は後頭部をぽりぽりかいた。
困ったように笑っている大我に向かって、黒田はさらに続ける。
「サラムに接触したのも、その任務のためだろう。正直に言え」
「・・・・・・」
それまでヘラヘラ笑っていた大我だが、ここにきてようやく、目つきだけが変わる。
口角は相変わらず上がり続けているものの、その目つきは明らかに以前のものとは違い、目の奥は笑っていなかった。
「困ったなぁ・・・」
「!!」
次の瞬間、大我が隠し持っていた銃を黒田に向けてきたため、黒田も急いで銃を向ける。
銃を向けてすぐ発砲すると、黒田の撃った弾が大我の腹に直撃し、そこからの出血を手で押さえながら膝を付けて倒れる。
蹲るようにしてそのまま動かなくなると、黒田はサラムを連れてそこから離れることにした。
サラムは、一部始終を見ていたため、抵抗することなく付いて行く。
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