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そこから去って行くとき後ろをちらっと見てみると、未だ岩のように動かない大我の身体がそこにあった。
「やれやれ。また何の用ですかね、間ノ宮さん?」
「まあ座れ、遠野」
間ノ宮に呼ばれた遠野は、ひとまず仕事が無かったためすぐに訪れた。
誘導された場所に座ると、新しい煙草を口に咥えて火を付ける。
「例の男が見つかったんですか?」
「それもある」
「なんだか含みのある言い方ですねぇ。間ノ宮さんがそういう話し方をするときは、碌なことがなかったと思いますが」
「全部片をつける。あの男も手に入れる」
「それは楽しみです」
ぷかぷかと、身体に良くない煙が部屋に充満する前に、間ノ宮は換気扇をつける。
遠野を呼びだしておきながら、間ノ宮から何か話かけてくることが無かったため、遠野は伊達眼鏡をずらして部屋を見渡す。
天井に向かって煙を吐くと、ふと何か思い出したように口を開く。
「そういや、あの将烈といかいう男はどうなったんです?」
「さあ。多分、生きてはいる」
「多分って、そりゃまた難儀な。以前からどうにかしたいと仰ってましたもんね。これで死ぬなり権力を失ってさえくれれば、間ノ宮さんにとっては万々歳ですよね」
「何のことだ。俺はただ、奴の罪を暴こうとしているだけだ。あくまで、正義の範疇の行為だ」
そんな間ノ宮の返答に、遠野は喉を鳴らして笑った。
「恐ろしいお方だ。全ては自分の為というわけですか」
「俺がさらに権力を持つことで、世の中は上手く事が進む。それをあんな奴に邪魔されてなるものか。奴が手にしてきた全てを奪い取ってやる」
「大丈夫か、サラム?」
「・・・ああ」
サラムと逃げている黒田は、辺りを警戒しながら進んでいた。
あと少しで自分の仲間がいる場所に辿りつくとサラムに説明をすると、何かの気配を感じてすぐに身を屈める。
息を殺していると、がさっと物影から出て来たのは野ウサギだった。
「なんだ、ウサギか・・・」
そう思ったのも束の間、サラムと黒田の周りには、教会で会ったばかりの男たちが並んでいる。
あの教会で定室と清涼を撃った素澤が、ガムを膨らましながらサラムに近づいてきた。
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