先憂後楽

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 「将烈、君を捕まえなければいけない」  「あ?なんで?」  間ノ宮の後ろにいる男が前に出てくると、まるで紋所のように紙を見せて来た。  とはいえ、結構距離があるためはっきりとは見えないが、良い報せではないことは確かだ。  「君には情報漏洩、部下への暴言・暴力、公務執行妨害、職権乱用、私的私用に権力を用いた等の内部告発があったため、こちらで身元を確保し、事情を聞かねばならない」  「・・・証拠は?」  「証拠を残すような君ではないだろう。これからじっくりと話を聞かせてもらうよ」  「任意か?」  「任意なら、断るのか?」  ぷはー、と煙草の煙を吐き出すと、携帯用灰皿にそれを押しつけ、将烈は立ち上がる。  そして間ノ宮たちの方に向かってアル行くと、将烈より少し背の低い間ノ宮を見下ろして不敵に笑う。  「任意でも行くよ。どうせ連れて行くんだろ」  「助かる」  そのまま男たちに両腕を拘束されると、将烈は男たちに連れられて何処かへと向かう。  将烈の後姿を見ながら、間ノ宮はポケットから携帯を取り出し、自分にかかってきた電話に出る。  「俺だ。ああ、素澤か、どうした。ああ、ああ・・・。死んでいたとしても、亡きがらを持ってこい」  「わっかりましたー。まあ、そう言われるとは思ってましたけどね」  間ノ宮との電話が終わった素澤は、ガムを噛みながら部下たちと共に、先程の崖の下にある沢へと来ていた。  しかし、そこには先程落ちたであろう男の姿はどこにも無く、何処かへ流されてしまったのかと辺りを捜索。  頭に黄色いバンダナを巻いている少しボサボサの髪型をしている素澤は、男探しを部下たちに任せ、耳にイヤホンを付ける。  それで何を聞いているのかというと、競馬らしいが、特に競馬に興味があるわけではなく、ただ聞き流しているのが好きらしい。  その頃、素澤に指示を出し終えた間ノ宮のもとに、別の電話がかかってきた。  「はい、お世話になっております。ええ、今探しておりますので、今しばらくお待ちください。ええ、ええ・・・」
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