先憂後楽

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電話の向こう側で、何かと偉そうな口調で話してくるのは、ザークという、一国をまとめている男だ。  見た目は無精髭でツリ目、グレーのオールバックだ。  何かを急かすように間ノ宮に話したあと、満足したのかどうでも良くなったのか、ザークからの電話が切れる。  はあ、と大きめのため息を吐いた間ノ宮は、その足で廊下を歩き続け、エレベーターに乗り、また廊下を歩き、途中の自販機で何か飲み物を買うとまた別のエレベーターに乗り、暗い部屋へと入って行った。  そこには数人がパソコンに向かってなにやら操作をしている。  その中の一人のもとへ向かうと、自販機で購入したおしるこをデスクの上に置いた。  「お、気が利きますね」  「ケン坊、暇してるなら調べてほしいことがある」  ケン坊と呼ばれた男は、青髪で目の下に少しクマを作りながらも、間ノ宮に渡されたおしるこのプルタブを開ける。  それを嬉しそうに飲みながら、間ノ宮にこう答える。  「調べるのは良いんですけどね。俺だって徒にいじってるわけじゃないんですよ?」  「分かってる」  「で?何調べりゃいいんです?」  「ある男の居場所を探して欲しい」  「そりゃ無茶苦茶な。監視カメラがあるとか、GPSでもつけてるとかならすぐわかりますけど」  「大丈夫だ。後でそいつに接触させる予定だ。それに、幼少期に衛星カメラハッキングして、別の位置情報で世界中パニックにさせた奴なら、人一人くらいすぐに見つけられるだろ」  「わー、褒められちった。ま、おしるこ頂いちゃったんで、ちゃんと調べますよ。分かったら報告します。素澤にも」  「ああ、頼む」  間ノ宮からのおしるこを全て飲みきると、ケン坊こと健は、パソコンをいじりだした。  その様子を見た間ノ宮は、その暗い部屋から抜けだした。  「・・・ん」  目を覚ますと、身体が痛かった。  どうしてだろうと思っていると、ごつごつした岩陰に寝かされているからだと気付く。
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