先憂後楽

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 顔を少しだけ動かすと、そこには一人の男がいて、雑炊のようなものを作っていた。  「お、起きたか」  身体を起こすと、その男が近づいてくる。  「俺は大我。お前すげーな。たっけー崖から落ちてきて死んだかと思ったけど生きてたよ。びっくりびっくり」  大我と名乗った男は、黒い癖っ毛の髪の毛でタレ目、それに八重歯が目立ち、まるで牙のようだ。  「お前、名前は?」  「・・・・・・」  大我は男に色々尋ねてみるが、まったくもって相手にされないため、諦めて一緒に雑炊を食べることにした。  しかし、毒でも入っていると思われているのか、大我が作った雑炊を一切食べようとせず、顔を背けてしまった。  大我は男の顔にそれを近づけて様子を見るも、全然動かないため、しかたなく一人で食べることにした。  黙々と食べていると、男が急に立ち上がる。  「どうした?腹減ったのか?」  男はそれにも答えることなく、大我に背を向けて歩いて行ってしまった。  「・・・なんだありゃ」  「これはこれは、ドクロ様」  「こんにちは。今回もお世話になろうかと思いましてね」  「それはありがとうございます。さあ、こちらへどうぞ」  ドクロと呼ばれた、伊達眼鏡をかけ、煙草を咥えたタレ目で飄々とした感じの茶髪の男は、女性に誘われ建物の中へと入る。  そこにいた男に挨拶をすると、数名の子供を連れてきて、ドクロに見せる。  「これはこれは。とっても可愛らしいお譲さんですね。それと、とても賢そうなお譲さんも」  「自信を持って送り出せる子たちです。いかがです?」  ドクロはまるで品定めでもするかのように、その子供たちをじろじろ見たあと、男に厚みのある茶封筒を渡した。  その中身を確認すること無く、男は子供たちをドクロへと引き渡す。  女性は子供たちに笑顔で手を振ると、子供たちは不安そうな顔をしながらも、小さな手を振り返す。  ドクロは子供たちを車に乗せると、そのまま立派なお屋敷へと連れて行く。  「大丈夫だよ。怖くないからね」  ケホケホと、煙草の煙で咳込んでいる子供たちを他所に、ドクロは屋敷の敷地内も適当な場所に車を停めると、子供たちを下ろした。  屋敷に入って執事や兵士を顔パスすると、グレーのオールバックの男と対面する。
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