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「お疲れ様でした!お先に失礼します!」
午前の練習を終えた朱莉は、チームメイトに声をかけて足早にテニスコートから出る。
昨夜、友人から再度お誘いのメールがあった。
──午後二時半に駅前のバスターミナルで待ち合わせ。
私服での待ち合わせなので、一度帰宅しなければならない。 ──現在は午後一時五分。
走れば間に合いそうだ。
練習着から制服に着替えている時間はない。クラブハウスに駆け込み、制服とカバンを引っ掴み革靴に履き替えた。
昇降口を通り過ぎ正門へと走ると、見慣れた車が停まっている。
首を傾げつつ近くと、朱莉に気づいたのか青年が降りてきた。
「おかえりなさい」
「雄大さん、どうして……?」
「説明は後ほど。さぁ乗って」
後部座席のドアを開けて乗車を促すと、朱莉は後部座席に体を滑り込ませた。
静かに閉められたドアに続いて、雄大が運転席に乗り込み、シートベルトをしてゆっくりとアクセルを踏み込んだ。
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