1杯目 高台の喫茶店

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いつも通学で通る道だが、過ぎ去る風景を見てどこか懐かしくなって頬を緩めた。 家に着くと、その足でシャワールームへと向った。五月といえ、さすがに運動をすれば汗をかく。 この後、どこに行くのかは聞いていないが、私服を指定されているので、汗を一度流してさっぱりしたい。 時間がないので、素早くシャワーを済ませると、あらかじめ用意していたワンピースに着替えた。 淡い色のワンピースは最近のお気に入りである。薄手のカーディガンを羽織り、ポシェットを肩にかけてから、部屋にある全身鏡の前でクルリと回り、確認する。 ──うん、問題なさそうだ。 時計を確認すると、何とか待ち合わせに間に合いそうだ。 パタパタと家の中を駆け回り、玄関を飛び出し、施錠してエレベーターに乗り込んだ。 エントランスにいるコンシェルジュに目礼されてマンションを飛び出すと、待ち構えていたように、車が停まった。
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