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「私はダージリンにしとこうかなぁ。朱莉は?」
「うぅん……じゃあ、アールグレイで」
「ダージリンとアールグレイでございますね、かしこまりました。お食事等はいかがなさいましょう」
タブレットにドリンクの注文を打ち込み、メニューボードのページを捲った。
「この、三段のアフタヌーンティーセットを」
彼女の友人がメニューを指で差し、空いている手でピースサインをする。──二人前ということだろう。
「かしこまりました、ではこちらの三段プレートのアフタヌーンティーをご用意いたします。少々お待ちくださいませ」
素早くタブレットに注文を打ち込むと、一礼して裏へ下がる。
廊下を挟んだと扉の奥がバックヤードだ。注文を受けたドリンクや料理はさらに奥にある厨房で用意される。
バックヤードの扉を閉めて、小さくため息をこぼしたのを同僚が目敏く見つけ、訝しげに声をかけてきた。
「どうしました、御影さん」
「有馬さん──いえ、何も。お邪魔して申し訳ございません」
見れば、トレイの上にはティーポットが載っている。
慌てて道を譲ると、彼は首をかしげながらも扉を潜っていった。
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