1杯目 高台の喫茶店

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事の始まりは、昨日。 中間考査が終わり、明日からテスト休みということもあり、教室内がざわついていた放課後。 「朱莉、明日って予定ある?」 「明日……?午前中は部活があるけど」 「おっ、ちょうどいいや! 明日、午後から出かけない? 気になるカフェがあるんだ」 机に乗り出す友人に「いいよ」と首肯すると、彼女はさらに目を輝かせた。 「じゃあまた夜に連絡するね!」 昇降口に向かいながら、嬉しそうに明日の予定を組み立て始める友人に再び頷いて別れた。 夏休みまであと二か月。夏の大会に向けて部活が忙しくなる時期だ。もしかすると、明日がゆっくりできる最後の半休かもしれない。 どんなカフェなのだろうと夢想して、思わず頬を緩めた。 グラウンド横のテニスコートでは、下級生が部活の準備を始めている。 どうやら友人と話しすぎたようだ。 朱莉は慌ててクラブハウスへと駆けて行った。
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