4. 白昼夢

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4. 白昼夢

香港に行くまであと4日。今日は急遽決まったバラエティ番組の収録だ。こういうトーク番組にはあまり出ないので少し新鮮で緊張する。 用意してあったワイン色のワンピースに着替えて軽くメイクを直す。お気に入りのリップを塗っていると、ノックのあと楽屋の扉が開いた。 「お、珍しくミアが緊張してる。」 「んー、なんだか慣れなくて。顔に出てる?」 「いや、なんとなく?そんな感じ。」 「なにそれ。なんとなくで分かっちゃうなんて、さすがお兄さん。」 「それほどでも。先に挨拶まわり行っておいで。」 「うん。行ってきます。」 ほんとにお兄さんには隠せないなあ。感情が顔に出ないとよく言われるし自分でもそうだと思うんだけど、5年という歳月は思ったよりも長かったみたいだ。 出演者達の楽屋を順に訪れ簡単に挨拶をしてまわる。中には以前に共演した俳優さんやタレントさんもいて少し緊張は和らいだ。 「ただいまー。」 「おかえり。ちょうどいない間新人の子が挨拶来てたよ。」 「そうなんだ、すれ違っちゃったね。」 「あと、収録始まりちょっと遅れるみたい。また時間になったら呼びに来るからゆっくりしてて。」 「分かった。あ、ねえ今度の香港なんだけどさ、自由時間とかあるかな?」 「うーん、少しならあるとは思うんだけど。行きたいとこあるの?」 「うん。調べてたら素敵なところ見つけて。行けたらいいなあ。」 「確認しておくよ。じゃ、ちょっと待っててね。」 また鳴り響くお兄さんの携帯。ありがとうと返事をする間も無く楽屋を出て行ってしまった。 さて、彼が帰ってくるまで何して待っていようかな。左手のピンキーリングを弄っていると、不意に欠伸が出た。 そういや昨日は緊張して少ししか寝られなかったな。 5分だけ、と思いテーブルに伏せて目を閉じた。
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