あくま。

3/8
前へ
/8ページ
次へ
――うっわーしょうもないわー。こんなのマジで信じちゃう奴がこんだけいんのね。そりゃ、このガッコの偏差値が下がるわけだわ。  私立小倉坂学園。――この近隣でも有名な、偏差値最底辺クラスの高校。絢音とて、本当ならこんなところに来たくて来たわけではないのである。本当なら今頃は、頭のいい県立高校に当時付き合っていた彼氏と一緒に行くはずだったのだ。  ところが、受験の数日前に姉と大喧嘩。勉強にまるで身が入らず、結果散々な試験結果に終わってしまったわけで。彼氏の真樹雄だけが合格し、結局自分達は離れ離れに。他の学校に行くことなど殆ど考えていなかった絢音が、滑り止めとして受験していたのはこの小倉坂だけだったのだ。  そしてそのまま、真樹雄とは会えなくなり、結局自然消滅して今に至るのである。自分はこんなくだらない学校に来るはずじゃなかった、もっと頭がいい学校で真樹雄と楽しい学校生活を送る筈だったのに――そんなこと思いながら、現在高校三年生。このゴミ溜めのような学校から脱出できる日は、刻一刻と近づいている。受験勉強そのものは、正直いって憂鬱以外の何物でもなかったけれど。 ――アタシはこんな奴らと違うし。信じるわけナイナイ。これ渡してきた奴に突っ返してやりゃいいでしょ、マジでうぜぇって。  絢音はそう思ったのだが。残念ながら、リストの一番下に書いてある名前は全く知らない人物だった。周囲を見下して三年間過ごしてきた絢音は、同学年どころか同じクラスの者達の名前さえうろ覚えである。それが一年生や二年生ともあれば完全にお手上げだ。書かれている名前が何年生なのかさえわからない。これでは、つっかえそうにも無理があるだろう。 「しょうがないなー…」  考えるだけ無意味だ。絢音はそう思ってノートを机の奥にしまった。――そしてそのまま、存在を三日間忘れたのである。  悪戯に決まってるんだから。そう思っていた。――そう思おうとしていたのだ、最初は。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加