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絢音は探した。もうこうなったら誰でもいい。このノートをまだ受け取っていない誰かに、あと三日でノートを押し付けなければいけない。そうしないと自分が死ぬ。この際、押し付けられる側がどうなろうと知ったことではない。
だが、状況は絢音が思っていたより遥かに悪かった。絢音が名前を知っている学校の人間は、全て既にリストに名前が記載されていたのである。そもそも、名前の数を数えてみると、三百九十七人。この学校の生徒と教師の数の合計は、確か三百九十九人であったはずだから――つまり、名前が書かれていない人間はもう二人しかいないということなのである。
うち一人は、絢音自身。つまりあとはもう、一人しか生贄にできる人間がいない。
――誰…誰なの!?あと一人って、誰っ…!?
もう誰でもいい。自分の身代わりになってほしい。絢音はその人間を捜して、学校の名簿を引っ張り出して確認するうち――その事実に気づいてしまうことになる。
それは、絢音がノートを貰ってから、五日目の放課後のこと。
名前が書かれていない一人。それは――絢音が現在付き合っている彼氏である、都築修也だったのである。
――修也…!修也にこのノートを、渡さないといけないってこと…!?
それをしたら、修也は確実に死ぬということではないのか。だって、もう他にノートを渡せる人間がいない。この状況で、新しい教員が一週間以内に来るとも思えない。ノートを渡せば、彼はまず間違いなく呪いを受けることだろう。
だが。
――迷ってらんないわ!ごめん修也、アタシの命がかかってるの、許して!!
背に腹は代えられない。優しい彼はきっと、許してくれるはずだ。絢音の為に死ぬなら本望だよ、とそう言ってくれるはずである。そうに決まっている。自分達の愛は永遠なのだ、必ずそうなるのだ。
音は誰もいない、隣のクラスの教室に飛び込んだ。そしてノートを、修也の机の中に投げ込んだのである――。
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