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「別れてくれ、絢音」
そして、今。
風の冷たい屋上で――絢音の前に、修也がいる。
心底傷ついた顔で、怒りの滲んだ眼で――絢音を睨んでいる。
「俺はこんなノート信じてるわけじゃない。そんなことよりも俺は…お前がコレを信じて“自分の代わりに俺が死んでも構わない”って思ったことが許せない。…結局俺は、お前にとってはその程度の存在だったってわけだ」
「ち、違うわ!違うの修也、アタシはっ…!」
「前からお前の自分勝手さや自己中なところはヤだと思ってたけど、これで決定的だな。俺のことも大事だと思ってんなら、その気持ちがあるなら…せめて黙って渡す前に一言相談すればよかっただろうが。それをしなかった時点でもう、俺らは終わりだろ。…もう顔も見たくねえよ、消えてくれ」
心底冷たい目で、いつも優しかった筈の修也に言われて――絢音は一人、膝を折った。
どうしてこんなことになってしまったんだろう。答えは、全く見えそうになかった。自分は一体、何を間違ってしまったのだろうか。あのノートは結局何だったのだろう。本物だったのか、偽物だったのか。
確かなのは絢音が――あのノートのせいで、一番大切なものを失ってしまったという、その事実だけである。
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