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学歴社会。それは個人の社会的地位が学歴によって左右される社会のことだ。
確かに、学歴を積むには学力が必要で学力が高ければ高いほど相対的にその人のステータスは高いと予想できるし、勉強は遺伝子の影響を受けにくいため学歴や学力は当人がどれだけ努力できるのかを示す指標にもなる。
看護師さんがなぜこの学歴社会について僕に見解を述べさせたいのかは皆目見当もつかないが、あえて答えるならこうだろう。
「僕は学歴社会は忌まれるべきものだと思います」
僕はなぜかさながら過去のトラウマを赤裸々に語っているような気持ちに襲われ、感情を殺してそう言った。
「そうですか。ではなぜ学歴社会は忌まれるべきだと良立暮さんは考えているのですか」
なぜ僕が学歴社会は忌まれるべきだと考えるのか? それは、それは──なんでだったっけ?
「うっ! 」
僕は唐突に激しい頭痛に襲われた。
目眩がする……病院の奥の方から声がする……。
「いいねぇ。良立暮くんは。最終学歴が有名な国公立なんて、僕なんて無名の大学だから給料も安くって。羨ましいねぇ」
「ほらほら、良立暮くん。キミはあの大学から出てるんだから地道な努力は得意でしょ?だったらこのくらいの仕事量は簡単だよねぇ」
「学歴のせいでこんな目に合うんだったら僕はもう、学歴は──いらない」
頭痛が収まり、僕は病院の奥から聞こえた声が幻聴だったことを理解する。
加えて、学歴、大学、国公立、、部下、上司、給料、ブラック、クビ──飛び降りで一緒にとんだ記憶、全てを思い出した。
「良立暮さん……大丈夫ですか?」
看護師さんは僕のことを心配そうに見つめている(仮面を被っているから本当に見つめているかは分からないが)、照れるなぁ。
「あ、いえ……全然大丈夫ですよ!」
と言いつつ、本当は大丈夫ではない。
全てを思い出したのだから。思い出してしまったのだから。
「良立暮さん、診察の準備ができたから診察室に来てね」
医院長が診察室のドアを開けて診察の準備が終わったことを僕に知らせる。
「では良立暮さん、お喋りはこれくらいにして診察室へ」
そう言ってハートの看護師さんは横長の椅子に座っている僕の肩を押した。
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