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第2章 パンドラの箱
今から約二十六年前、僕、良立暮はこの街の産婦人科で小さな産声をあげた。しかし、母は僕を産んだ直後に亡くなってしまった。
束の間に起こった喜劇と悲劇、僕の父は当時軽いパニックを起こしたらしい。
父子家庭で育ち、母の顔すらわからない僕だがグレることなく、寧ろ中学生の頃には学年一位の成績を有する超優等生になっていた。
僕は生まれつき手先が器用だったので本来は母親がこなすはずだった役割もなんなくこなした。
父は県の公務員で収入もそれなりにあったため、金銭関係には苦労せず、中学時代から学力を保持したまま日本でも超有名な国公立の大学へと僕は進学する。
今思えば、これが悲劇の始まりだった。
超有名大学に進学した時点で薔薇色の人生が保障される。人生イージーモード。などと思われがちだし、実際僕の周囲もいい人生を送っているらしい。確か大手企業の社長になった人がいたっけ?
だがしかし、僕はその対象にはならなかった。
今現在、僕は自宅警備員だが、ほんの三年前まで桜京コーポレーションという外資系のIT企業に務めていた。
就職理由は至って簡単だった。
給料が高く、定時に帰れて、大手企業なので倒産しにくく、自転車で通勤できる範囲内だったからだ。
しかし、この判断が僕の人生を大きく狂わせることになる。
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