第2章 パンドラの箱

2/8
前へ
/25ページ
次へ
 桜京コーポレーションに就職した僕は経理に配属された。 「良立暮君、この書類のここ、ミスだらけだ、やり直し 「いいねぇ。良立暮くんは。最終学歴が有名な国公立なんて、僕なんて無名の大学だから給料も安くって。羨ましいねぇ 「仕事はまったく出来ないのに」  この辛辣に僕の間違いを指摘する人物は上司の増野平律島(ますのだいらりつと)。  そう、この人が僕の人生を狂わせた張本人だ。  律島は俗に言う“学歴コンプレックス”を抱えていた。  律島は五十代前半で会社でもなかなか高い地位にいる人だが、学歴はそう凄いものではない、無名大学出身だ。  そのため入社当初の収入はすずめの涙ほどで、家族を養えるほどではなかったため婚活を先送りにし、結局婚期を逃してしまい現在進行形で独身で、長い年月を掛けて築いた社内での地位も国公立出身の新卒者である僕によってどんどん差を縮められ、その結果“学歴コンプレックス”が爆発し、その劣等感から来る鬱憤晴らしのため律島は僕に当たっていた。  僕が入社した当初はそこまでではなかったが、律島の鬱憤晴らしはどんどんエスカレートしていった。なぜなら僕の成績がどんどん伸びていくからだ。     
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加