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第1章 華麗なるダイブ
強く、冷たい風が吹く初春の都会の街はまさに生存競争に打って付けのコロシアムだった。
道徳やモラルを重要視している今日の社会でもそれは増えすぎた人口を統率するための集団行動を円滑に進めるためのものであって、寧ろ個人に対する心の道徳性は欠如している。
冷たく、風当たりが強い。
こんなことを言っていると“世を拗ねている”と集団の中で、その集団の正義の範囲内で真面目に暮らしている偉い人達に蔑まれてしまうかもしれない。
でも、別にそれでもいい。
だって僕──新城良立暮は世を拗ねているのだから。
今、僕が立っているのはこの街で一番高さのあるビルの屋上だ。
地上四十五階建て、その屋上には吸い込まれそうな程に綺麗な夜景が広がっている。
無数の窓から人工的な光が漏れ、さながらイルミネーションのごとく光り輝いている。
人生の最後に見る景色としては百点だろう。
この高さから落ちれば即死はおろか、落下中に気絶して苦痛を味わうことなく旅立てる。
薄汚れていて決して美談としては語れない僕の人生に自身で終止符を打たなければならない。自らの幸福の為に──苦しみから逃れるために──。
僕はオリンピック選手にも劣らないくらい華麗に、大胆に屋上から飛び降りた。否、飛び込んだ、眼下に広がるこの街に、社会という名の冷たいプールに。
落下し、意識が薄れていく刹那、僕は大きな“鷹”を見た。
それは“世闇”から捻り出されたように、さながら蜃気楼のように見えたが、僕にはそれが不思議と凛々しく見えてならなかった。
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