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俺は世間で言われる高校生。普通の学校に通う高校一年生。ただ、今でも思う。あの時、あの出来事がなければ、俺はあの悪魔に会っていないと。
その時は、デパートにいた。友達と一緒に好きなライブが近所のデパートの近くにあるという情報を耳にして、今か今かと友達を待っていた。遠くの方で誰かが俺の名前を呼ぶ声がして、その呼ばれた方向へと振り向く。振り向いた先に友達が遠くの方で大きく手を振り、俺の方へと走ってきた。
その時、俺はゾッとする。大きく手を振って笑顔でこっちに走ってくる友達の後ろには、大きな鎌を持つ何かがうろうろしていた。その何かが動くと空間が蠕き、目は青白く、その目の形から笑顔ということがわかる。友達は俺の方へと着いた直後、「どうした?」と声をかける。俺は「後ろ!!」と叫び、くるっと友達は真後ろに顔を向けたが、その友達が俺に向かって一言。
「後ろに誰もいないよ?」
俺は愕然とした。友達はただ後ろにいるのが気づいていないんじゃない。見えてないんだ。感じていないんだ。あの異質な何かが。体が拒否反応を起こすようなあいつから漂う空気が。あいつが持っている鎌が。
俺はその化け物がはっきり何かとはわからないが、こいつに関わるとやばいと言うものだけは直感でわかった。咄嗟の判断だった。ぱっと友達の手を掴み、まるで猫を見た鼠のように近くの建物に乗り込んだ。
「おいおい、どっどうした。」
「いいから来い。」
友達を引っ張り、近くの建物の壁からすっと顔を出して視線を送る。その何かはその場でうろうろとさまよい続けていた。どうも何かを探しているようにもとれるその動きも、友達は何も見えてない様子がとれる。これで本当にこいつは一切気づいていないということがはっきりとわかった。すると友達が、
「おい、結局どうしたんだ?」
と後ろのやつが、俺に向かって言う。ばさっと一人の男の肩に両手を掴み、俺は怒鳴る勢いで説明しようとした。
「いいか、お前はこれを聞いて、俺をばかにするだろうが、よく聞け。お前は見えないかもしれないが、そこにk…」
そう…その時は一切気づかなかったんだ。その友達はとっくに死んでいると……。体がグニャリと力が抜け、唇は青白くなり、黒髪だった髪は白くなって、目の焦点が合わない。俺の心はなにもない虚無へといきなり放り投げられた。ただ違和感を残して……。
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