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今からこの時のことを思うと、いつ死んだのか、何故死んだのか、どのように死んだのか疑問が湧いただろう。だが、友達が死んでいるとは一切思わなかった俺は、そんなどころではなかった。俺はすぐに友達の肩を揺さぶり、「おい、どうした!?」と白い体に訴えた。しかし、その返事は一切来ない。今俺は初めて人生の中、目の前で人間の死というものを実感した。だが、そんな余韻に浸るほど運命は甘くない。
突然ぬるっと空間が蠢く何かが私の友達の遺体から現れる。俺は驚きのあまり腰を抜かし、道路に尻餅をついてしまった。青白い目が死神の表情を表現するかのように目でその喜怒哀楽を表す。そして、この時の顔の表情はニタニタと微笑む悪魔のような笑顔。その顔から出る謎の白い吐息が俺の顔面につくぐらいまで、ぐっと近くで俺を見ていやがる。気がつくとガタガタと震えるように俺の足は震えていた。
「ほぉ?私のことが見えるのかい。この私がっ…人間にっ」
まるで狂うように、私を下に見るように、滑稽なものを見るように笑みを浮かべ死神は笑う。俺は歯をガタガタと鳴らし、小刻みに震える体を必死に抑えようにも全然震えが止まらない。
「あぁやっぱ、人間の恐ろしく怯える姿は良いねぇ。その恐怖という言葉が似合う表情、そしてガタガタ震える体。本当に素晴らしいよ人間はぁぁぁ。」
体をくねくねと動かしながら喜びに浸っているのか、透明な体が太陽の光を屈折してゆらゆらと瞳に映る。
「でも、こんなに素晴らしい光景をすぐにとらないといけないなんておかしいと思わないか?君~。」
甘い息をするように俺に問いかけた。しかし、その質問に応答ができないほど恐怖という言葉が体を縛り上げる。
「あっでも、見かけたらすぐ殺さないといけないなぁいんだよなぁ。いやー、この光景を見たいがために死神になったのに、くそがぁぁぁぁあぁぁ。」
さっきまで空気を吸うように俺を見下した態度が、物に八つ当たりするかのように檄を飛ばした。そして一人芝居が始まる。
「何が『お前たちは人間の魂を刈り取る者だ。だから、人間を見つけ次第魂を抜きとるのだー』だよ。そもそもの死神の意味間違ってんじゃねーか。それで俺が…」
俺はふと逃げねばと本能が刺激し、そぉとその場を抜け出そうとした。
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