9人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
「まーちゃん、いい……?」
「大丈夫だよ、あずさ」
私の言葉を合図に、ベッドの上であずさは私を抱きしめた。そしてしばらくの間、彼女は黙って私を抱きしめ続けた。
私は何も抵抗はせず、されるがままに彼女の心を受け入れる。
すすり泣く声は聞こえてこない。彼女が私の胸に顔をうずめているせいで、彼女の表情を伺うこともできない。それでも、今の彼女がぶつけようのない悲しみを抱いていることだけは間違いない。
こんな風に、あずさが何も言わずに私の胸に飛び込んでくるようになったのは、いったいいつからだっただろう?
……いや、そんなこと、改めて問うまでもない。それは大切なあの人が亡くなったあの日にあることは明らかだ。
2年前のあの日、私たちは大切な人を失った。彼女、羽岡あおいは、私にとっては大好きな幼馴染で、あずさにとってはかけがえのない家族で、そんな彼女はまるで、私たちを常に照らし出してくれる太陽の様な存在だったんだ。
そんな彼女がロイエの任務中に死亡したという報を受けたのは、その日の午後のことであった。空が今にも泣き出しそうなほどの厚い雲に覆われていたことだけは、私は今でも鮮明に覚えている。
最初のコメントを投稿しよう!