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誰が言ったのか知らないが、気づけば人混みの前の方は前に進み始めている。
2時だ。
うっかりしていたので、小塚が走り始めたことには気づけなかった。
僕は合格発表、という言葉がここ半年の間、ずっと嫌いだった。
そんな、受かったヤツだけのイベントみたいな言い方。前しか向けない、首が回らなくなったような、そんな言い方。
そんな感情で気づけば僕は今日を迎えていた。
だからこそ、手元の紙切れに刻まれた番号が、そのまま壁に立てかけられたボードに印刷されていたことには、自分の中でさえどう思ったらいいのか、ただ迷った。
その一つ上の番号が、2つ飛ばしになっているのも。
「おめでとう」
ごめん。と言いかけてしまった自分を呪った。
「すげえな!お前、この前の模試D判定だったのに」
しかし、言葉が出せない。
「うん、いや、お前は頑張ったよ。俺はちょっと、あれだな、多分。正月サボってたのがいけなかったのかな」
何か言わなきゃ…!とは思うほど、僕の舌は空虚だけを掴んでしまい、焦る。
腹に力を入れる。解けてしまいそうな何かを、必死に両手でつなぎとめるーーーー、
「ありがとな」
それが僕に言えた最善の言葉だった。最悪だ。
小塚はそれでも笑顔だった。
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