0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
僕の体をくるん、と後ろに回転させて、背中を押す。「ほーら、書類、もらってこい」
目の前には、合格を前にした笑顔の長蛇。そのしっぽは、かなり遠くだった。
「うん」
僕は前に進む。後ろは振り返らない、なんてのは強がりでも何でもなくて、ただただ余裕がなかっただけだ。
あの時、なんと声をかければ良かったのか。
その時、はもう過ぎてしまったから、もう取り返しがつかない。
つかない。
つかない、
つかない、、
本当にそうだろうかーーー、
「小塚」
振り返っても、目を凝らしても、彼の姿は無かった。
遠くの曲がり角に残る吐息の尾が、ゆらっ、と風に揺れて見えなくなった。
最初のコメントを投稿しよう!