21人が本棚に入れています
本棚に追加
「え?」
一瞬彼女は何が起こったかわからなかった。
ゆっくりとガラスをミートボール色に染め上げていくパスタ。
ついに取れたお皿が落ちる軽い音が彼女の耳に響く。
そのことが赤ずきんを我に返した。
「あぁぁぁ―――!!」
嵐を呼ぶかのような叫びが狼男の鼓膜をキィンと震わせた。
赤ずきんの目が外に飛び出そうな程見開いて、瞼は瞬きを忘れている。
そりゃあもう、この世の終わりみたいな顔だったよ。
けれどその叫びは狼男以外聞こえてはいなかった。
何故かって?
そいつはズカズカと入ってきた強盗の鉄砲の音が引き連れた客どもの絶叫の一部に数えられていたからさ。
彼女の皿をはじいた何かってのは、鉄砲玉のことでね。
見慣れたお二人さんには大したことじゃなかったが、一般市民の皆様はそりゃあくわばらくわばら震えてらぁ。
学校さん秘伝の防災訓練が役に立ったのか、皆一斉にテーブルの下に隠れた。
最初のコメントを投稿しよう!