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「僕はね、アリアンネにこう言われたんだ。『もし私の娘がここに来るようなことがあったら、この拳銃を売って欲しい』とね。これは直感だけど、きっとあの子は僕の店に来るだろう―――。それが今だと思うんだ」
ジャックは根拠のない話だとは自分でもわかっていた。だがね、職人の勘って奴は恐ろしく鋭いもんでさ。直感というよりは未来予想というに近い。
教官自身、そんな男の直感を信じたくなったのさ。
「これは―――。」
と教官は詰まった言葉をもう一度、言い直す。アリアンネの拳銃を優しく机に置いてて―――ね。
「これはあの子の母形見であり、同時に私の教え子の形見でもあるんです。貴方がアリアンネとの約束を果たすと仰るのなら私は何も言いません。それがアリアンネの救いにもなる」
そして教官は拳銃を持ち、ジャックに持ち手を向けこう言った。
「ならば私とも約束をして欲しいのです。この拳銃の持ち主の話はしない―――と」
とね。
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