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「クリスティ、もう六歳なんてお母さん、ビックリしちゃう!」
母が「せーの」と合図を出すと、姉達も一緒に誕生日の歌を歌いだす。姉達と母の綺麗な歌声が何とも心地よく、いつの間にか私もその中に一緒に入って歌っていた。歌が歌い終わる頃、前のめりに椅子に膝立ちしてロウソクの火を勢いよく消した。ほっぺ一杯に膨らませて息を吹く姿は何より全力だったって母は言っていたっけ。
「「「クリスティ、おめでとう!」」」
お祝いの言葉が一斉に私に向けられる。
母や姉達の拍手がたまらなく嬉しい。心と体が幸福で満ちあふれたような気分―――。幼い私にとってこれほど喜びを感じたことはなかっただろう。足が地に着かない程ウキウキしていたのだ。この場を楽しんでいたのだ。だが私には一つだけ気になることがあった。
「お父さんは?」
私の大好きな父。誕生日会には出席すると言っていたのにも関わらず、この場にはいなかった。姉達も「そういえば」と顔を見合わせる。
「さぁ……、どうしたのかしら……」
娘の一言に心配する母。母はガラス工房に繋がる内線電話を手に取ると、父の応答を待った。
(出ない……)
何度かけ直しても繋がらない。母の顔をゆっくりと曇っていく。
「ちょっと悪いけどお母さん、工房の方まで行ってくるわね」
そう言うと母は急かした足取りで玄関まで小走りで向かう。とっさに見た母の横顔。バタンと大きな音を立てるドア。私は幼いながらも密かな恐ろしさを感じていたのだった。
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