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『この世に起きることは全て現実』
これはクラレンスが唯一信念として掲げている言葉さ。きっとこの信念が彼の心を大きくは動じさせなかったんだ。
「君は……」
クラレンスは落ち着いて、かつ驚いた態度で黒猫を見下ろす。すると黒猫は毛づくろいしながら話し始めた。
「人は僕のことを『化け物』、『悪』、『妖怪』、『邪気』……『悪魔』、なんて呼んだりする。」
「悪魔?」
クラレンスは『悪魔』というキーワードに反応する。この時、彼の勘はピンとさえたのさ。コイツはアクロポリスの手の物だってね。
「好きに呼んでくれよ。」
そういうと「ちょっと君と話したいくてね」とぐーっと体を伸ばす黒猫。眠そうなあくびが何とも自由気ままな猫らしいのだが、悪魔と聞いたクラレンスはそれすら警戒していた。
「そんな怖がらないでよぉ」黒猫はあざとい顔で父を見つめた。
「話とはなんだ」父は質問する。猜疑心を持ち合わせたまま、キッと黒猫を見ながら。
「そうそう、話ね。僕は君の研究について話があるんだよ」
「何のことだ」
クラレンスは高圧的な態度をとりながら、剣幕を強くする。
「『悪魔の心臓』のことさ」
黒猫はニヤッと妖気的な笑みを見せた。その笑みは全てお見通しだと言っているかのようだったのさ。
え?何の研究かって?実はクラレンスはとある研究に没頭していたんだよ。何を隠そう『悪魔の心臓』の研究さ。クラレンスはアクロポリスのやり方にどうも合点がいかなかった。逆らった者には血縁者諸々死を?
冗談じゃない。
愛すべき家族を守るために彼はアクロポリスに対抗する手段を見出そうとしたんだ。そしてクラレンスは反アクロポリスのレジスタンスへ密かに加入した。守る手段を手に入れるために。
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