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数年の月日が流れ、彼は『悪魔の心臓』の秘密に辿り着いた。禁忌ともいえるその秘密―――。レジスタンスにとっても彼にとっても革新的な一歩であったが、踏み外せば破滅の一歩でもあったんだ。
「僕達の秘密を君は知っちゃったんだろぉ?そりゃ見過ごせないよ」
黒猫は小さな足で音も立てずクラレンスに近づく。
「さっぱりわからん。お前は何を言っているのだ」
クラレンスはまたも知らないふりをする。
「またまたぁ。僕は何でも知ってるよ?君が研究した全て!地下室にその証拠があるでしょ?もしこれがもっと上の奴らに知られたら君達一家は皆殺しかもね」
「脅しているのか」
彼の剣幕はまるでナイフのように鋭く、茨の棘のようだった。
「とんでもない。取引さ」
実際のところ、悪魔の秘密に気付いた事実を知っていたのはこの悪魔だけだったんだ。だからこそ取引なんて台詞がコイツから出てくる訳でね。再び黒猫はニヤリと笑い、こんなことを口にした。
「君の研究のことは黙っといてあげる。その代わり僕に君の体を貸しておくれよ」
この言葉は彼を一瞬で激昂させた。それは自分の命を差し出せと言っているに等しい言動だったんだ。悪魔が自分を乗っ取れば、家族に何をするかわからない。この取引はあまりに不平等で、不条理だってね。
何せ相手は悪魔だ。信用なんてできたものじゃなかった。
「信用出来ない。私がお前に体を差し出したとして家族に手を出さない保証があるか?ましてや『体を貸せ』だなんて私が死んだ同然ではないか」
厳しい口調で強い態度を示すクラレンス。すると黒猫は先程とは違う、不快な笑みを見せた。
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