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人生で初めての恋愛が終わった。まだ10帖程度のワンルームには彼女の残り香のように香水の匂いが残っている。
突然の別れだった。いや、なんとなく分かっていたか。今回もそうなるんじゃないかというある種確信はあったように思う。
今回の件は自分にとって本当に起こってほしくなかったことで、少々腹が立ってきた。別に強制されていたわけではないしいつ辞めてもいいとは思っていたのだがずっと続けてきたことをやめるのももったいないとも感じていたことが高崎を迷わせた。
しばし葛藤した後、高崎は床に座り込んでいた体を重たげに起こし、机の引き出しからある一冊の分厚い本を取り出した。
無機質な茶色の本の表紙にはこう記されていた。
「人生しおり 高崎享麻」
20数年連れ添っていたその本を高崎は迷うことなくゴミ箱に放り投げた。
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