4.領主ひとすじの狼が媚薬モブレされる話

30/39
前へ
/39ページ
次へ
 だが指は指だ。しかも若者の指は細くて無知で、いいところに必ずしも当たるわけではない。ルフは唇をわななかせながら、自分のものを手で包み込んではあっと息を吐いた。既にべたべたに濡れていてすべりはよい。こすると、バチバチと頭の中で雷が鳴る。 「あう、んっ、んあ……っは、ああ、あー……」  精を吐き出して、つかの間忘我のため息をつくルフの後ろでまたつばを飲む音がした。血走った目で痴態を見つめている若者がごそごそと自分の前を解く。何をしようとしているか悟ってルフは身じろぎをしたが、それは文字通り、身じろぎをしただけだった。期待と怯えが半々の視線をあびて、若い男は興奮に息を震わせて笑う。 「し、心配しなくていいよ……僕が助けてあげるからね……」  ルフは緩慢に首を振った。彼に助けてほしいわけじゃなかった。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加