4.領主ひとすじの狼が媚薬モブレされる話

7/39

21人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
 なにしろ、この薬はすごい。 「ハア、ハア、ハア……」  首から頬にかけてが燃えるように熱かった。目はうるみ、頭はぼーっとする。腰が重たくなって、発情期に入った生き物のように、ひとつのことしか考えられなくなってくる。ヤりたい。  かすむ目がつらくてまばたきすると、コロッと目尻から生理的な涙がこぼれた。それを指で雑にぬぐって、ルフは、 「女がこっちに来ませんように」  と切実に祖霊に祈り、壁を擦るようにして前に進んだ。その気のない女を襲うなんて唾棄すべき行いだ。……と、きっと彼の領主なら言う。最悪なことに、ルフはいま自由の身で、力が強く、理性がほとんどない。ないことが自分で分かっていた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加