4.領主ひとすじの狼が媚薬モブレされる話

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 頭の中がぐちゃぐちゃで、なにがなんだか分からなくなってくる。ルフの目にまたじわっと涙が浮いて、すべり落ちた。 「大丈夫!?」  ルフは呆然として、ぱちぱちとまばたきをした。地面に倒れたルフの顔のすぐ前で、誰かが彼を覗き込んでいる。まったく気づかなかった。若い男だ。善良そうな顔をしている。ルフの頭の中で警鐘が鳴った。善良そうに見える人間が、最後までそうだとは限らないし、そもそも善良に接するべき隣人の中に、ルフを入れてくれることは少ない。
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