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 この二人がまだ通じていないことだけは信じている。ただし、惹かれあっている二人だ。時間の問題だと気を揉んできた。  対して、この姫は自分に思いを伝えるために命まで危険に晒した。伊勢は大和守の娘に過ぎない。こちらは大納言家の姫君である。  えい、ままよ。  伊勢は側室か二人目の北の方にしてしまえ。  父だって二人の女王をそれぞれ北の方と呼ばせた。  嫌なら、兄にやる。  仲平は冠と束帯を脱いで姫の隣に横たわった。姫が力の入らない腕で夜具をかけてくれようとした。 「もう夏になるんだ。夜具をかけて寝るには私には暑い。だがあなたは痩せて寒いんだね」  仲平は束帯を姫と自分の上に広げた。  姫がまた笑ったような気がする。  仲平は昔乳母がしてくれたように、姫の背中を優しくトントンとして「私はここにいるからね、安心しておやすみ」と言った。
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