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 姫が「はい」と今度は声を出した。しゃがれていた。痩せて声がしゃがれるほど私を思ったのか。哀れな娘だ。  哀れで、愛おしい。  粥を食べさせ、すっかり冷えた朝餉を仲平が食べ終えると、また姫が袖を引っ張った。 「今夜また来ます。だから日中も少しお食べ」  随身が戻ると仲平は、姫にそれまで着ていた肌着を渡した。 「夜に私が来るのをお待ち」  右衛門府に出仕した後に、後朝の和歌まで作って送った。  肌着と和歌を与え、自分はあなたと関係を持ったと姫に示した。姫から返歌が届いたが、これは女房が作ったのだろう。  兄は特に近院について何も聞かないので仲平も何も言わない。  その晩、約束通り仲平は近院の姫を訪れた。 「姫君は髪と体を拭かせ、粥を召し上がりました」と姫付きの女房が言った。  言われてみれば、姫は夕べ少し臭った。  姫は体をもたれかからせるようにしていたが、起きていた。美しい衣を着せられていたが重くないかと心配になる。  夜具も枕も並べて二つずつ用意されていた。 「起きられるようになったのですか」と仲平が言うと、姫は「はい」と答えた。 「今夜は自分で食べてみます?」 「食べさせてくださらないなら、また絶ってやる」  姫の声は、今朝よりも美しく聞こえる。     
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