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 所顕しの宴には、もちろん仲平の兄の右衛門の督・時平も呼ばれた。  時平にとっては青天の霹靂である。  昔、父が滋子か今はもう亡き佳珠子を入内させるかと悩み、まだ幼妻だった母が二人を見て佳珠子を選んだ話を思い出した。  母上のおっしゃる通りだ。  時平は伊勢を思った。  底意地の悪い誰かから聞かされる前に、自分で伝えよう。  仲平が本当に新郎として現れたのを確かめた後、言い繕って、急ぎ東七条院の温子を訪ねた。  仲平の所顕しを聞かされた温子は絶句し、伊勢は顔を真っ青にして崩れた。  みわの山いかに待ち見む年ふとも たづぬる人もあらじと思へば  伊勢は一首だけ残して、両親のいる大和に落ちた。  時平から伊勢の句を見させられて仲平は、伊勢はそれほど己の体面が大切かと疑った。 「なんということをするんだ、お前は。仮にも太政大臣の息子だろう。それがわざわざ一人の娘を傷つけて、大納言家に婿とられるとは」  時平の色白で美しい顔は冷たく、仲平が大納言家の姫君が食を絶った話をしようとしても、「言い訳など聞きたくないわい」と手をふりスタスタと行ってしまった。   
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